『高座舌鼓』
林家正蔵さんの『高座舌鼓』の、印をつけてあったところを拾い読みしていて、
東京の下町では、スジといえば魚のスジ。たぶんフカだと、私は聞いているのだが、フカの軟骨をすり身と合わせたものらしい。歯ざわりも旨味も一味違った凄みがある。もっとも近頃、下町のおでん好きでも魚のスジを知っている人は少ない。
p.23
という一文に、微妙なシンクロを感じた今夜である。
というのも、今日はふと思いついて、夕食におでんを作ったところ。大根とこんにゃくと里芋、じゃがいも、牛すじ(茹でたものが冷凍庫に入っていた)は台所にあったので、大根と里芋・じゃがいもを下煮して、出汁である程度軟らかくなるまで煮たあと、練り物を買いに、近所のちゃんとした野菜や食材も扱っているコンビニへ出かけた。以前、あさイチ!で京料理の老舗の若旦那が、おでんの作り方を紹介していた時に、おでんに練り物を入れるのは、お出汁をよりおいしくするため、と言っていたので、ふだん、ほとんど練り物を食べないのだけれど、買い出しに行くことにした次第だ。
買ってきたのは、正蔵さんも
おでん屋でひと目をはばかり、「ちくわぶ、ちょーだい」と注文しているおじさんを見ると、後ろから抱きしめたく成るのは、わたしだけだろうか?
p.23
と書いている、人によって評価がわかれるおでん種の代表選手・ちくわぶと、はんぺんだ。はんぺんは、真四角で白くてふわっとしているアレではなくて、灰色の長方形をした方。ごぼう巻とどっちにしようかな、としばし迷ったのだが、そういえばさつま揚げが冷凍庫にあったのを思い出して、はんぺんを選んだ(のだが、家に帰ったら、さつま揚げのことはすっかり忘れてしまった…)。
味付けは、作りおきの麺つゆの素を適当に加えて、食べるときに、柚子胡椒を添えた。適当に作ったわりには、けっこう美味しくできた気がするので、また作ることにしよう。お芝居の夜の部などで出かけた日でも、おでんさえあれば、冷凍ご飯を蒸篭で温めて、お漬物かなにかがあれば、ささっと食べられていいしね。そういう意味では、冬はポトフもいいなぁ。
それにしても、最初に『高座舌鼓』を読んだ時にも、この魚のスジが気になってマークしていたのだけれど、まだ暑い時期だったこともあり、すっかり忘れていた。やはり気になるなぁ、魚のスジ。軟骨とすり身を合わせた、歯ざわりも旨味も一味違った凄みのある食べ物、なんて言われたら、食べてみたくなるなぁ。
- 作者: 林家正蔵
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/05/23
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